2スレ目-藤原君

バレンタインデー、首無地蔵

バレンタインデー

378 名前:本当にあった怖い名無し sage [2008/03/15(土) 00:18:39 ID:pB2paFndO]
藤原君がおかしいと言うより、俺のまわり全てがおかしいんじゃないかと思い始めたのは一か月前のこと。
いわゆるバレンタインというやつだが、残念なことに頬を赤らめてチョコレートを渡してくれるような女の子は俺の前には一向に現れず、クラスメートの女子たちが板チョコやチロルチョコをくれるだけだった。
空しすぎて死にたかった。しかも友人の藤原君はいかにも怪しい見た目なのに意外とモテるらしく、下級生の女の子や違うクラスの女子からいくつか手作りチョコをもらっていた。
これより悔しいことなんかそうそうないと思う。甘党な藤原君はチョコレートを有り難くリュックに仕舞い込み、時折授業中にコッソリ食べていた。羨ましい。死ねばいい。
そんな悪夢のバレンタインデーの終わりがけ、授業を終えた俺たちは帰り道を歩いていたのだが、そのときに更なる悪夢が起きた。
彼女であるヒロミちゃんにチョコが貰えなくてブツブツ言う藤原君にちょっぴりざまあみろとか思っていた俺の前に、突然女の子が走ってきた。
即座に俺のセンサーが反応した。待ちに待ったチョコレートだ!!!実際女の子は赤い紙袋を持っていた。見たことはなかったが、
ショートカットの可愛い女の子だった。

「あの、これ、貰ってください」

女の子はにっこり笑って俺にチョコレートを渡してくれた。俺はニタニタしてうまく御礼も言えなかったが、女の子はペコリと頭を下げると走って行った。
「可愛い!!!超可愛いね!!!」
俺は喜々として藤原君に言ったが、藤原君はクソ面白くなさそうな顔で言った。
「でも残念だね。まだまだ童貞卒業は難しそうだよ」
なんでそれを知ってるんだ。てゆうかどういう意味だ。そう問詰めると藤原君はニヤリと笑い、俺から素早く紙袋を奪ってチョコレートの箱を取り出した。
「なにすんだよ!!!」
せっかくのチョコを奪われてマジギレした俺は取りかえそうとしたが、藤原君は器用に箱からチョコを取り出すと、
俺の目の前でチョコレートを二つに割った。
そしてそれを見て俺はゾッとした。

二つに割られたチョコレートから、まるで糸を引くように大量の長い髪の毛が出てきたからだ。
まさか今どきマジでこんな呪いみたいなおまじないをやる奴がいるとは…しかもただのおまじないにしてはおびただしい量の髪の毛だった。


379 名前:本当にあった怖い名無し sage [2008/03/15(土) 00:19:22 ID:pB2paFndO]
藤原君はアコーディオンのようにチョコレートで遊びながら、
「あれ、2組の山崎だよ。昨日まで髪長かったからおかしいなあと思ってね。僕のバイト先のオカルトショップに呪いの方法聞きに来てたし。」
と抜かした。知ってたなら早く言えばいいものを、彼女に相手にされなかった八つ当たりとしか思えない。大体そんなとこでバイトすんな。
しかも藤原君はチョコレートを大事に箱にしまい直すと、「面白いものがあったよ」と紙袋から手紙のようなものを出した。
そこにはただひたすら

「好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き」

とあり、二枚目の便箋には「あなたの子どもを産みたい」とか「恋はいつしか愛に変わった」とかポエムなんかも書かれていた。3枚目には意味不明な赤い手形。
怖い。気持ち悪いを超えて怖かった。正直こんなのドラマの中だけだと思ってた。しかし不意に振り向けば、走って帰ったはずの女の子が遠くからじっとこちらを見つめていた。
捨てたら殺される気がした。

「どうしよう、どうしよう藤原君」

「さあ?面白いじゃないか。僕もお得意さんをないがしろにはしたくないし」

頼ってみたがあっさり相手にされなかった。頭の中で藤原君に死ねと何度も呟いた。だが藤原君はまたニヤって笑うと、
「まあ、所詮は素人。返り討ちに合うだろうね。」
と言った。俺は意味がわからなかったが、藤原君はそれ以上何も言わなかった。俺ももう何も言う気力がせず、女の子の視線を背中に受けながら黙って帰った。

それから特に何事もなく数週間が過ぎたとき、例の山崎さんが転校していたのを知った。バレンタインデーのすぐあとだったらしい。
彼女が転校するからと最後にチョコレートをくれて、ちょっとやりすぎてしまったのか、呪いの返り討ちにあって転校するようなことになったのかはわからないが、藤原君の何時にも増してニヤ付いた顔から思うに、後者のような気がした。

とにかくいろんな意味で恐ろしいバレンタインだったが、ホワイトデーなのにお返しできる相手がいないこの事実がいちばん恐ろしい気もしている。



首無地蔵

817 名前:本当にあった怖い名無し [2008/05/07(水) 00:31:30 ID:nYO6mHovO]
敢えて流れに逆らい投下。
クラスメートの藤原君がおかしいことな何ら違和感を感じなくなってきた今日この頃。
晴れて俺らは最高学年となったわけだが、受験やら就職やら面倒なことで忙しくなるのもまた事実。
なら今の内に遊んでおこうと、俺は仲間たちと集まった。カラオケにする?ボーリング行く?と高校生らしい会話をしていた俺だが、その集まりに藤原君がいたことによって事態は変わった。
「心霊スポット行かね?藤原いるし」
と、誰かが言い出したのだ。みんなも何故かノリノリで、藤原君はもちろん満更でもなさそうな表情をしていた。
「やめようよ!!藤原君の存在でもう充分じゃん!!」と俺は止めたが、好奇心に火がついた皆を止められるはずもなかった。
そして、地元では割りと有名なアパートに行くことになった。心霊スポットというより、自殺の名所っていうか、過去5年の間に4人も自殺してるアパートだ。
激しく怖い。てゆうかニヤついてる藤原君が激しくキモい。
しかしみんな気にする様子もなくアパートに入って行った。階段を踏む度にギシギシと嫌な音が鳴る。正直幽霊より階段が壊れたほうが怖いなあと思った。
そのとき、
「ねえ?佐倉。あれは何かな?」
嫌な笑顔を浮かべた藤原君が指差した先には、小さい祠が見えた。アパートの前の角にちょこんとある。
「何って…祠じゃん」
それ以外なんだってんだ。と言い返すと、藤原君は嫌味なくらいおおきくため息をついて、
「馬鹿以外の何者でもないねお前。その隣りだよ。」
と失礼なことを言った。内心ムカつきながら目線を移すと、男の子が立っていた。
俺達と同い年くらいだろうか、暗くてよく見えないが確かに男の子だった。
「男の子でしょ。それが何」
再び言い返すが藤原君は心底あきれた顔で言った。
「あの男の子が手に持ってるもの、何かわかる?」
この暗いのにわかるかよ、と言いつつ目を凝らして見て見る。すると、彼の手に丸いものが握られてるのが見えた。
嫌な予感がした。
「もしかして…」
それはどう見ても、お地蔵さんの首だった。そして、祠のお地蔵さんには首がない。「キモッ!!ね、早く行こうよ」
あまりの不気味さに俺は藤原君を引っ張って先に行こうとした。しかし
「こっちのほーがキモくない?」
藤原君がにんまり笑って言う。恐る恐る振り返ると、

818 名前:本当にあった怖い名無し [2008/05/07(水) 00:33:53 ID:nYO6mHovO]
祠の隣りにいた男の子が真後ろにいた。
「ギャー!!」
俺は叫んで藤原君を引っ張って走った。アパートを降りて振り返る。男の子はもういなかった。
「良かったね藤原君。助かったよ」
息切れしながら振り返ると、藤原君は表情ひとつ変えないで立っていた。そして、
「佐倉。足元気をつけて」
と言った。ああ暗いから心配してくれてんのか、とちょっと見直したのも束の間、何かを蹴飛ばした。ふと目をやると

「あ、あああ!」

お地蔵さんの頭が転がっていた。
「あーあ。罰当たり。」
藤原君がそうほざいたが、俺はもう知らないふりをして走って帰った。仲間たちを置いて来たことなんかスッパリ忘れていたが構っている場合でも無かった。

翌日心配になって祠を見に行ったら、お地蔵さんの首はセロテープでグルグルに巻かれて体にくっついていた。
誰がやったかは知らないが、そっちのほうが罰当たりだと思った。

  • 最終更新:2009-12-05 21:05:34

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